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君島大空 合奏形態 夜会ツアー2024-2025 笑う亀裂 LINE CUBE SHIBUYA ライブレポートを公開




1月29日、LINE CUBE SHIBUYAで開催された、君島大空合奏形態(君島大空、新井和輝、石若駿、西田修大)のワンマンライブ。その本編の最後に演奏されたのは昨年の暮れにリリースされたばかりの新曲“Lover”だった。この曲を演奏する際、君島大空は「ずっと、こういう歌を書きたかった」と言った。“Lover”のモチーフの根底には、彼が今のような音楽を始めるきっかけとなった出来事があるという。彼はこの日、「やっと真っすぐな言葉で歌うことができた」と言った。



昨年12月から名古屋・THE BOTTOM LINE、大阪・味園ユニバースと回り、ファイナルの東京・LINE CUBE SHIBUYAへと辿り着いた今回の君島大空合奏形態のツアー「笑う亀裂」は、“Lover”が生まれたからこそ行われたツアーだという。セットリストは、君島の独奏で未発表曲を披露し、そこから合奏形態での“午後の反射光”になだれ込む演出で幕を開け、最後は“Lover”で本編が締め括られるという構成。彼の最初の作品集のタイトルトラックである“午後の反射光”で始まり、“Lover”で終わるという、恐らく根本に同じモチーフを抱くこの2曲が最初と最後に配置されていたことにも、私は、君島の思いを感じずにはいられなかった。



振り返れば、初めて君島大空の音楽と出会った時、「こんな言葉で話す人がいるんだ!」と、鮮烈なインパクトを与えられたものだ。それは彼本人の話し言葉の話ではなく、彼の表現すべてが、まるで新しい言語のように感じたのだ。彼は、彼だけの言葉で、彼の心の内側を象り、彼が見る景色を象っていた。そんな彼は今、「真っ直ぐな言葉」で何かを語ってみたいと思っているのかもしれない。「真っ直ぐな言葉」で誰かに話しかけることに、彼は、彼の持つたくさんのものを賭けてみたいと思っているのかもしれない。この日、君島は「今、新作を作っている」と言っていた。その作品を持って、この春、今までで一番大きなツアーをやると。それがとても楽しみになった。





ライブの冒頭、君島独奏によるオープニングから“午後の反射光”に至る、緊迫感と力強さの宿る演奏に心を捉えられた。「その空間に鳴らす最初の1音はどんな音であるべきか?」という問いに、彼らは神経を研ぎ澄ませて向き合っているようだ。“午後の反射光”の演奏時、照明はステージの上を照らすというよりは、むしろステージから客席を照らすように放射されていて、それが、君島作品が初期の頃より抱いている「反射光」のイメージを具現化しているようにも感じた。





続く“傘の中の手”からバンドは少しリラックスしたモードになった気がするが、リラックスしたらしたで、君島大空合奏形態は「怪獣」みたいになるのである。LNE CUBE SHIBUYAは椅子席の会場で、最初はみんな座って観ていたのだが、あまりに躍動感のある演奏を浴びているせいで、そろそろ体がムズムズしてくる。そんなタイミングを見計らってか、“笑止”の演奏の途中、君島は挑発的にこう叫ぶ――「LINE CUBE?……なに座っとんじゃい!」。物販では「君島」という自分の名前の刺繡が入ったジャージを売っている、そんな君島大空の内側に宿るチンピラかギャル(あるいは、その両方)が顔を出すと、そこからは熱狂的な祭りである。イントロから歓声が上がった“˖嵐₊˚ˑ༄”や、まだ音源化はされていない楽曲“鏡inter”では、エレクトロニックなダンスミュージックまで飲み込んだサウンドで観客たちの体が揺れに揺れる。



君島大空合奏形態の拡張されたバンドサウンドを堪能し、巨大な熱気に包まれていく会場。一見カオスなそのサウンドが、しかしキメラティックな異物感としてではなく、ナチュラルかつ不思議な爽快感と共に届けられるのが君島大空合奏形態の特別なところだ。それは、彼らがどんなサウンド手法も「装飾」としてではなく「肉体」として扱うからかもしれないし、4人の間にある「友愛」と呼びうる関係性が生み出す効能なのかもしれない。





“向こう髪”では新井、西田、石若が一旦ステージから離れ、再び、君島の独奏。粘り気を持ちながらも跳躍するガットギターの響きは、足がもつれながらも華やかに踊り続けるダンサーのようで、可憐で、温かい。観客に「自由に、座ってもいいですからね」と告げると、君島は「渋谷公会堂」の名でも知られる今日のライブ会場・LINE CUBE SHIBUYAについての思い出を語る。彼は小学5年生の頃、父親に連れられて7人くらいのジャズギタリストがセッションをするライブを観にこの場所に来たことがあり、それが彼の中には強く思い出に残っているという。君島は、場所や空間、そこに宿る記憶や地層、亡霊を大切にする人である。演奏する場所が大きなコンサートホールになっても、そんな彼の持つ性格は変わらないのだと感じる瞬間だった。続く“迎合”では、再び合奏メンバーが合流する。さらに“世界はここで回るよ”では新井はウッドベースを奏で、沈黙を運ぶような、豊かな演奏が空間に満ちる。





ライブが後半に差し掛かり、披露された“花降る時の彼方”は、ヴェールがかかったような音源のサウンドとは違い、より輪郭とダイナミズムを明瞭にして、この曲が根源的に持つ激しい生命力を露わにしながら迫ってきた。「真っ直ぐな言葉」で語ろうとする今の君島の意志が、ここにもあるような気がした。ライブの終盤に披露された“遠視のコントラルト”、“Lover”、さらにアンコールでの“光暈(halo)”の演奏には、筆舌に尽くしがたいほどの壮大さと美しさがあった。ライブ全編を通して、無邪気に音に戯れる子どもっぽい表情を見せたり、夜の孤独に沈むような繊細な横顔を見せたり、様々な表情を見せた君島大空合奏形態だが、最後に彼らは、ソングに身を委ね、それを真っ直ぐに届けようとする、端正で頼もしい表情を見せた。特に“Lover”の歌唱は本当に素晴らしかった。見事なライブだった。



今回のツアーのタイトルは「笑う亀裂」と名付けられていた。「亀裂」とは、私とあなたの間にあるもののことであり、「私とあなたは違う人間である」ということの象徴かもしれない。しかし、今の君島大空はそこに「笑う」と付けた。今年の春に開催されるツアーのタイトルが「春を前にしての歓喜の実践」であることもこの日発表された。今、君島大空は、私とあなたが違う人間であることを祝福し、笑おうとしているのかもしれない。 文/天野史彬

写真/Kana Tarumi





君島大空 合奏形態 夜会ツアー 2025『春を前にしての歓喜の実践』


各販売サイトURL

ローソンチケット:https://l-tike.com/ohzorakimishima/

イープラス(URL):https://eplus.jp/ohzora-kimishima/


小樽 GOLDSTONES

2025年3月9日(日)

OPEN/START:16:15/17:00 券種:スタンディング

CHARGE:¥6,500(D代別)



福岡 BEAT STATION

2025/3/21(金)

OPEN/START:18:00/19:00

券種:スタンディング

CHARGE:¥6,500(D代別)



大阪 ZEPP NAMBA

2025/4/4(金)

OPEN/START:18:00/19:00 券種:1Fスタンディング、2F指定席

CHARGE:¥6,500(D代別) / 2F指定席 ¥7,000(D代別)



名古屋 ZEPP NAGOYA

2025/4/5(土)

OPEN/START:17:00/18:00 券種:1Fスタンディング、2F指定席

CHARGE:¥6,500(D代別) / 2F指定席 ¥7,000(D代別)



東京 ZEPP HANEDA

2025/4/17(木)

OPEN/START:18:00/19:00

券種:1Fスタンディング、2F指定席

CHARGE:¥6,500(D代別) / 2F指定席 ¥7,000(D代別)


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